「解法暗記」で偏差値60は越えられない?難関大合格のために手放す3つのこと【大学受験数学】
「数学の学力を上げるには、とにかくチャート式やフォーカスゴールドの解法を暗記することだ」
このような声を聞いたことはないでしょうか。
確かに、典型的な問題の解き方を頭に叩き込む「解法暗記」は、数学の基礎体力をつける上で非常に有効です。事実、定期テストや進研模試で偏差値60程度(中堅大学レベル)までは、このやり方で目に見えて点数が伸びていきます。
私自身もチャート式を何度も何度も、ただひたすらに繰り返すことで典型問題の解法を暗記し、旧センター試験では8割以上、地方国公立や中堅私大の問題なら確実に満点か1問2問ミスまではたどり着けました。
しかし、もしあなたが難関大合格を目指すなら…
「解法暗記」という強力な武器が、ある日突然、全く通用しなくなる瞬間が訪れます。
今回は、暗記型の数学学習を続けることで「失われるもの」と、偏差値60の壁をぶち破るための学習についてお話しします。
偏差値60の壁
「覚えている」から「考えられるか」
なぜ、解法暗記では難関大に通用しないのか。
それは、出題される問題の「質」が根本的に変わるからです。
まずは、以下の問題を見比べてみてください。
【解法暗記で解ける典型問題】
網羅系の参考書に必ず載っている、いわゆる「パターン問題」です。
問題A-1
関数
y=x^2-2ax+a^2+1
(0≦x≦2)の最小値を求めよ。
問題A-2
a1=1、 a{n+1} =3a_n + 2^nで定められる数列 {a_n} の一般項を求めよ。
これらは、「軸の位置で場合分けをする」「両辺を割る」といった決まった手順(レシピ)を知っているかどうかで勝負が決まります。
解法を暗記していれば、誰でも機械的に正解にたどり着けます。
【思考力が試される難関大レベルの問題】
一方、難関大では「どの単元の知識を使うか」すら隠されている複合問題や、見たこともない設定の問題が出題されます。
問題B-1(分野の複合)
サイコロをn回投げ、出た目の積をPnとする。
Pnが4の倍数になる確率を求めよ。
問題B-2(試行錯誤と実験)
p、p+2、p+4がすべて素数となるような素数 p をすべて求めよ。
解法暗記に依存している受験生は、Bのような問題を前にすると
「確率の公式?数列の公式?」
「素数を求める公式なんて習ってない!」
とパニックになり、完全にフリーズしてしまいます。
「記憶の引き出し」を漁り、ピッタリ当てはまるものがないと「わかりません」と白紙で投了してしまうのです。
解法暗記学習を続けることで
「失われる3つのもの」
パターンに当てはめるだけの学習が板についてしまうと、難関大突破に不可欠な以下の3つの能力が失われてしまいます。
1. 泥臭く「試行錯誤する」能力
見たことのない問題(問題B-2など)に出会ったとき、思考力のある生徒は「まずはp=2, 3, 5…と具体的な数字を入れて実験してみよう」などととにかく手を動かします。
暗記に頼る学習は、この「あーでもない、こーでもない」と実験し、法則を見つけ出す泥臭いプロセスを放棄させてしまいます。
2. 「なぜ?」を問う論理的思考力
「なぜここで平方完成をするのか?」
「なぜこの条件で場合分けが必要なのか?」
という根拠(必然性)を飛ばして、結論のパターンだけを覚えてしまうため、問題の条件が少しひねられただけで太刀打ちできなくなります。
3. 数学本来の「面白さ」や「楽しさ」
これが最も厄介な問題かもしれません。
パターン作業に成り下がった数学は、パズルを解くようなワクワク感や、未知の問題を自力で打ち破ったときの達成感を奪います。
結果として、数学がただの「苦痛な暗記作業」と化し、受験を乗り切るための長時間の学習モチベーションが枯渇してしまうことにつながります。
脱・暗記数学!
「考える数学」へのシフトチェンジ
では、偏差値60の壁を越えるにはどうすればいいのでしょうか。
答えは、「覚える数学」から「考える数学」へのシフトチェンジです。
具体的には、以下の2つを日々の学習に取り入れてください。
- 「なぜその解法を選んだのか」を自分の言葉で説明する
答えが合っているかどうかに満足せず、「なぜそのアプローチをとったのか」を他人に説明できるレベルまで言語化してください。
口頭で説明しようとすると、自分の理解が浅い部分(ただの丸暗記になっていた部分)が浮き彫りになります。 - すぐに解答を見ず、最低15分は「実験」する
わからない問題に直面しても、すぐに解答・解説に飛びつかないこと。
具体的な数字を代入したり、図を描いたりして、最低でも15分は自力で糸口を探る時間を意図的に作ってください。
難関大の入試を突破するためには、こうした「脳に汗をかく時間」が絶対に必要です。
1日何時間も机に向かってこの試行錯誤を繰り返す圧倒的な学習量が、確固たる「地頭」を作ります。
見たことのない難問に立ち向かい、苦しみ抜いた末に解法をひらめいたとき。
そのとき初めて、数学は「苦痛な暗記科目」から「最高に面白いゲーム」へと変わるはずです。
解法暗記の「第1形態」をクリアしたなら、恐れることなく「第2形態」である思考の海へ飛び込んでいきましょう。